国境に神経を使わない国はない ー 世の中グローバル化が進むからこそ

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対馬関連の転載記事が続いたので、気になりつつも下書き保存のままにしていたものをアップすることにしました。
対馬だけに限らず国境離島の状況はとても厳しいようです。
国民の意識が向けられる機会を増やすためにも、次の記事のような問題提起はとても重要だと思います。


iRONNA
http://ironna.jp/article/705 より

インターネットで売られる日本の離島
   『月刊正論』 2014年2月号


   国境に神経を使わない国はない。

 メキシコ、チリ、ペルーは「国境」「海岸部」から一定距離以内の土地について外国人所有を制限する。ブラジルとベネズエラも同じだ。

「離島」の外国人所有に制限を課している国もある。ニュージーランドの離島(0・4へクタール以上)の所有は許可制だし、パナマの島もそうだ。韓国は外国人土地法に基づき、軍事目的上必要な島嶼地域等の所有は許可制になっている。済州島の開放特区(不動産投資移民制度)ばかりに目が向きがちだが、規制措置があることを忘れてはいけない。

 もっとも、これから述べる日本の現状はやや異なる。


   世界の非常識─離島をネット販売

 2010年、財務省によって呉市沖の無人島・三ツ子島は一般競争入札にかけられた。もちろん入札に国籍条項などない。旧日本海軍病院の遺構のある島へは18枚の応札があった。落札した地元港湾荷役会社は言う。

「(他者に)落札された場合、島で何が行われるか予想できない……開発の計画はなく、手つかずの状態で置いておく」

 ヤフーオークションでインターネット入札をはじめた自治体は、すでに全自治体の過半数を超えたが、落札後の転売規制には限界がある。かつての公有地が一瞬にして居所不明の匿名者の持ち物になっていく…。所有者を追っていくシステムが日本は脆弱だからだ。

 沖縄軍用地も金融商品化しネット販売されている。2011年3月には、地権者の中に在中国が登場するなど多国籍化が進む。外為法上、外資から外資への転売は報告不要(財務省令)だから、外資購入後の不明化は避けられない。ネット販売による高値落札の対価が匿名化、不明化の助長につながっている。

 無人島販売は島ブームで活況の様子だが、2013年2月、沖縄県西表島の西側に位置する外離島の平地の大部分(1・7へクタール)を有する地権者夫妻が台湾で殺害されるなど、きな臭い噂は絶えない。ネット販売中だった西表島北側の鳩離島を2013年8月に外国人が購入したことが話題になったし、5億円のネット価格がついた西表島東側のウ離島についても、その購入先が注目されている。

 長崎県対馬市では2013年8月、260へクタールの水源林が買われそうになった。島北部の水源林が3400万円の価格で競売にかかったのだ。日本政策金融公庫資金から融資を得ていたM林業の所有山林で、入札開始後、2日目までに韓国資本が応札したとされる。とうとう対馬市が乗り出し、入札期間中に債権者は「競売取り下げ」をした。寸前で事態は収拾されたが、買収費用だけでなく、将来の管理負担も負うことになる。

 こうした騒ぎになる箇所は、まだ恵まれている。大方は売り手と買い手の経済事情によって秘密裡に事が進められていく。昭和40年代に2%台後半で融資を受けた篤林家は全国で数百人。それぞれ500へクタール以上の規模の山林を取得したが、林業不況で大半の者が買い手を待っている。投げ売り価格でも触手を伸ばす日本人は少ない。


   一瞬で決めた付言

 日本国土は売り物だらけで懸念は尽きないが、そう感じる向きは少数派だ。

「外国人・不明人の不動産投資や動機不明の不動産買収によって何が困りますか? 特段、今困っている現象があるわけでもないでしょう」

 もちろん反論する。

「所有者が追えなくなりますし、買い戻しもできなくなるでしょう。それに不明化していくと災害復旧もままならず、産廃投棄地や行政不介入地になり得ます」

 隣国に気兼ねしてか、それとも改正そのものが面倒なのか。「たら、ればの話に騒ぎすぎです。煽りつづけるのはいかがなものでしょう」。こういう台詞を何度聞かされたか。

 2013年8月、国交省は〈不動産市場における国際戦略について〉をとりまとめ、公表したが、そこに国の基本スタンスが読める。国民生活への影響の考え方について、次のようにまとめている。

「水源地・安全保障の観点からの配慮が必要であるが、基本的には海外からの投資を拡大することが必要である」

 本文をまとめた有識者委員会は、この部分についてほぼ一瞬で付言することを決めたそうだが、現下の政府の一定の考え方、方向性を示したものといえる。国家の成長戦略として不動産業の位置づけは不可欠で、安全・エコを前面に出すグリーン・ビルディング(環境不動産)は最も期待の大きい分野である。水源地や安全保障には配慮するけれど、基本は外資歓迎で成長戦略が優先される。海外からの投資拡大は大前提というわけだ。

 整理してみよう。要は峻別せよといいたい。国交省が報告書で断っているように、こうした国際戦略はあくまでも都心部の土地に限定されるべき考え方だ。防衛施設や国境離島、それに水源林、農地については慎重な議論が必要で、各エリアにふさわしい配慮が加えられ、実効性のある規制ルールがあってしかるべきだろう。

 流れを止めない配慮は当然必要だが、都心部の不動産とそれ以外が同じわけにはいかない。もし、都心部以外の土地について、この無策をつづけるならば、次のような対応は到底とれず、将来に禍根を残してしまうからだ。


   水源地買収は杞憂?

 2012年9月、米国内の出来事である。

 オレゴン州の空軍基地にほど近い場所に風力発電事業(発電所の買収)を進めていた中国・三一集団(建機メーカー)に対し、オバマ大統領は安全保障の観点から事業の中止を命じた。外国投資・国家安全保障法(FINSA)に規定する対米外国投資委員会(CFIUS)の権能に基づき命令したものだ。ホワイトハウスは当該地が米空軍施設に隣接し、規制空域と重なるためだと発表している(その後、三一集団は大統領とCFIUSを提訴した)。

 世界の最新事情は大抵こうだ。

 ヨーロッパでは、2010年、ギリシャの国有財産の島々が売却ターゲットとなり、ロードス島やミコノス島の名前が挙がった。すぐさま中国、ロシアの投資家が名乗りを上げたが、その後は具体化せず、そのまま沙汰止みになっている。

 アルプス山頂でも同じような話が2011年にあった。イタリアとの国境に位置するオーストリアの国有地(山岳地)の売却が検討され、独、中東、露の投資家が即座に反応した。だが、地元の猛反対で結局、オーストリア政府(森林管理局)が購入している。

 アイスランドでも2011年に外資買収が話題になった。3万へクタールを中国投資家の黄怒波氏が買収した後、リゾート開発するというものだったが、内務大臣の反対で待ったがかかり、持久戦に入っている。財政事情が厳しい中にあっても、結果的に国土の外資買収には各国で慎重な対応がとられている。

 農地を中心にしたランドグラブ(土地奪取)に対抗する法制化もここ2、3年で進んだ。食糧資源の保全戦略の一環だが、ブラジルは2010年に規制強化した。アルゼンチンも2011年末、〈登記制度は国内統一〉〈外国人の農地面積比率は国内の農地面積の15%まで〉〈買収1件につき、1000へクタールまで〉旨の法改正を実現させた。

 だが、こういう立ち回りは日本では見られない。時代環境がグローバル化したからと、明治時代から引き継ぐ土地法制を緩和し続けている。

 外国人の土地売買規制の表をご覧いただこう。日本の特殊性、特異性が浮き出てくる。唯一、◎である。海外からの不動産投資に全く規制をもたず、転売もフリー。平和であることが前提の制度になっている。秘匿資産としては最適で、秘密の倉庫──フリーポートならぬ秘密の安全不動産となる。低リスクだから、ダークサイドマネーはほっておかない。

 すでに有名になっていて、ロンドン大学(LSE GREG)が公刊した『アジア太平洋不動産投資ガイド2011』にも書かれてある。そこから読み取れる結論は「不動産投資に外資規制が『皆無』なのは、日本だけである」──。

 残念なことだが、対馬の買収騒ぎに対しても「(外資に買われた面積は)甲子園球場のグラウンドの中の1・5四方分に満たない面積だ」(日経新聞 2013年9月28日)と動じないし、東京五輪に期待する不動産コンサルも、米軍基地周辺の外資買収を杞憂だと断言したのち、「水源を抑えられたとしても、有事の際には法律を改正して外国人の土地利用を制限すればいいだけの話です」(THE21 2013年11月)と楽観している。


   世界標準からはずれた日本

 フランスでも2012年、一悶着あった。ブルゴーニュ地方のワイナリーが中国人に買われ、反対運動が起こった。だが、フランスでは2億円以上の土地やワイン農地の外国人取得には事前届出が必要だし、市町村長は前もって土地を取得する権利(先買い権)を行使することができる。不動産への手出しは簡単にできないようになっているのだ。日本のサントリーも1980年代、ボルドーのワイナリー買収には苦労した。

 考えてみれば、ほとんどの先進国は肝となる土地政策をどこかにもっている。

 アメリカは前述のとおり外国投資・国家安全保障法(FINSA)で土地買収の中止を求めることができるし、価値ある鉱床に属する土地取得は米国国民に限られる。また州法レベルで外国人の土地所有に制限をかけている州が50州のうち23州に見られる。

 2008年、対馬の海上自衛隊隣接地が外資に買われたとき、時の総理は「(バブルのとき日本もマンハッタンのビルを買った)自分が買ったときはよくて、人が買ったら悪いとはいえない…」とコメントし、外務省も「政府として何か言う立場にない」と語ったが、それはマサチューセッツ州のその場所に売買規制がなかったからだ。全米の国土がそうだと勘違いしてはいけない。

 英独では土地売買は自由ではないかと主張する向きもある。「売買面」だけを見ればそうだが、「現況把握」と「利用規制」に抜かりはない。それが先進国というものだ。外国人所有→所有者不明化という流れを許さない仕組みを持つ。

 イギリスでは土地売買後の登記は義務だ(日本では登記は任意)。それゆえ所有者不明は出にくい。それに英国内の地図(Ordnance Survey)は陸軍がつくった正確なものだが、日本はそうではない。一度、登記所に備え付けられている境界地図を見てきてほしい。和紙に筆で描いた漫画絵図をそのままトレースした図面も混じっている。大阪府内の9割、東京都内の8割は地籍調査が終わっておらず、正確な境界地図は存在しない。

 ドイツの地籍調査は100%完璧に終わっており、基点を管理するのは軍だ。所有権譲渡の登記も義務化されている。利用規制は厳格だ。その権能がまるで違う。市町村が決定した地区詳細計画(Bプラン)の拘束力はとびきりで、日本の利用規制(建築基準法・農地法・森林法)の奔放さとは比較にならない。

 農地の違法転用はわかっているだけでも年間8200件(2008年)。だが、反省文を1枚書けばOKである。違法開発や違法建築を行っても訴訟に持ち込めば、個人は役所に勝つことができる。経済的不利益を強要されても憲法29条──財産権の保護が登場し、護ってくれるのだ。哀しいかな日本は、知らないうちに誰かが土地を手に入れ(所有し)、そのまま黙って持ち続けることもできる。所有・利用オールフリーの不動産ヘイブンの国家といえよう。


   民主党の失敗

 与党だった民主党の失敗は、2010年、水源林の買収問題を扱うPT名を「外国人による土地取得に関するPT」としたことだ。外資か否かで党内論戦をはじめてしまった。外国人を排除すればよい…直截的な対策として〈外国人土地法〉が何度も持ち出されたが、後述するようにハードルは高く、この議論に嵌まって時間を浪費した。案の定、震災など重大ニュースが相次ぐ中、いつしか時間とともに忘れ去られ埋もれていった。「外資による買収面積は減少してわずか」との政府発表も、この難題の先送りと鎮静化に役立った。

 そもそも本テーマは、「日本の水源林を守る議員勉強会(2010年4月)」「安全保障と土地法制を研究する議員の会(2011年2月)」を起点としており、いずれも高市早苗議員(現政調会長)が呼びかけた。スピード感ある実現可能な法案が当時、既に起草されていた。だが野党時代に叶うことはなかった。

 潮目が変わったのは2013年夏以降だ。安定与党が実現した後、永田町でようやく、本テーマの本格議論がはじめられる環境が整ったことが要因だが、もう1つ。引き金になったファクト(事実)も見逃せない。対馬の海上自衛隊対馬防備隊本部傍の買収事実の発覚である。

 6月11日、韓国蔚山市の外国法人が買収し、ダミーを使うことなくそのまま登記した。筆者は7月、現地で事実を確認し、地区長とのヒアリングを行い登記簿もとったが、この時点で防衛省は当該買収事実を掴んでいなかった。

 その後は日本維新の会の国会議員団の訪問(8月29~30日)、臨時国会での中田宏議員(維新)の質問(10月22日)と続いた。

 一連の動きは、「国家安全保障土地取引規制法」(維新)の提示、自民党の「安全保障と土地法制に関する特命委員会(佐藤正久委員長)」の設置につながり、同じく自民党内の「水の研究会(中川ゆう子会長)」の議論とも相まって、新たな土地法制を起草するステージに入っている。

 しかし、全国の現場では今も仲介ブローカーたちが水面下で蠢き、ダミー会社やフロント企業が暗躍しているだろう。目的不明の土地取引がより巧妙かつ複雑に繰り返され、土地所有の不明化は拡がり続けていると見てよい。

 全国で1万へクタール単位(山手線の内側は6000へクタール)の土地を買い集めたファンドや資産家が複数あるが、これらの1社が一括売りしたり、M&Aで外資化していくだけで広大な国土が動く。こうした変化を拾う仕組みは現在、この国には整っていない。

 以下、3つの論点と講ずべき喫緊の対策を示す。


   3つの論点

 政府が発表した外資買収面積の801へクタール(2013年)には、北海道や熊本県等に所在する外資系ゴルフ場施設に付帯する山林(数千ヘクタール)や鹿児島空港に隣接する中国系資本が所有する林地(253ヘクタール)は入っていない。騒ぎになっている長崎県対馬市についても、外資所有山林はゼロだとされている。定義上の違いだが、外資(外資系)に買収されている実際の面積は、桁が1つか2つ上だろう。

 買収者の約7割はペーパーカンパニーと見られるが、こうした動機不明の買収は不明資産化に直結しやすく、問題が生じた場合、その解決は厄介だ。一筋縄ではいかない。

 深刻なのは、やはり防衛施設周辺や国境離島だ。北海道では既に自衛隊施設の周辺3キロメートルの位置に3件、109へクタールの土地を外国人が所有している。基地内の対舟艇対戦車隊の動きを俯瞰できる場所だ。奥尻島、佐渡島、沖永良部島などにもきな臭い動きが伝えられ、法的対応が最も急がれる。


《外国人土地法》

 現存する外国人土地法(1925年~)は政令がないため実質機能していないが、新政令を定め、復活させることはどうであろうか。

 端的に言うと「できないことはない。でもとても手間がかかる」ではないか。時計の針を戻すことが必要になってくる。GATS(WTOサービスの貿易に関する一般協定)の交渉(~1993年)において、加盟国159か国のうち、約4割が何らかの留保(適用しないと意思表示)を行っているが、我が国は何ら留保を行っていない。もし新たに外国人規制をはじめるなら、国際約束をした各国に対し、リセットのための交渉をはじめなければならない。また締結済みの二国間投資協定等でも課題が残る。相互主義により留保を付した相手国ばかりでない。内国民待遇や最恵国待遇を与えている国々に対し、1つひとつ解きほぐしていく交渉が必要で、補償金も想定しておく必要があろう。現実的だろうか。

 もっと言えば、外資か否かの見極めも難しい。

 外為法に準じ、外資(外国人含む)の定義は、「(1)外国人(非居住者である個人)」「(2)外国企業(外国法令に基づいて設立された法人、外国に主たる事務所を所有する法人)」「(3)国内法人のうち、外国企業等の出資比率が50%以上の法人、外国人の役員が過半数を占める法人」と便宜的に筆者は使ってきているが、(3)をはじめグリーンフィールド投資等の見極めは容易ではない。

 そこで、ひとまず外国人土地法を脇に置き、スピード感をもった現実的な対応として、国内外を問わず規制を講じていく策を考慮する必要があろう。先行モデルは鉱業法改正だ。

 2011年、60年ぶりに改正された鉱業法は、外資の子会社(日本法人)が相次いで鉱業権の設定をする実態に対し、先願主義を改めるとともに、探査段階から許可制にするなど、国内外差別することなく審査プロセスにおいて適正なチェックを導入した。

 この捌きは本テーマにも適用できる。土地情報(所有者、面積、筆界等)をそもそも行政が掴めていない──不明化、ブラックボックス化が止められない現状の欠陥・不備を、まずは重要な国土から正していく法整備が必要であろう。


《新法制定の要諦》

 既に新法制定に向けた調整が与野党間ではじまっているが、今後の取り組みに期待を込めたい。制定の考え方として2つの方途が考えられる。

 1つは新法「国家安全保障土地取引規制法(仮称)」で、安全保障上、重要な土地(重要国土I:防衛施設周辺、国境離島等)を計画的に公有地化し、その周辺等の土地(重要国土II)の取引を許可・事前届出制とするものである。国土(地籍)調査を必須とし、鉱業法と同じく、国内外差別はしない。主務大臣は外務・防衛・国交大臣。用地買収予算(防衛施設用地関連予算)等が新たに措置されようが、重要国土のエリアはやや限定的となろう。

 もう1つは新法「国土安全保障・保全法(仮称)」。安全保障に関連する、重要な土地(重要国土I)に加え、その周辺の土地や沿岸域・水源地等、地域にとって重要な国土(重要国土II)を計画的に公有化し、かつ保全を図るものである。いずれのエリアにも土地取引規制(許可・事前届出制等)と国土調査を義務付ける。目的は海洋環境保全、生態系保護、国土資源保全等とし、国土資源(土・水・緑)を安全保障に関連し、より高いレベルで保全していくためだ。国内外差別はしない。議員立法とし、主務大臣は外務・防衛に加え、総務・法務・農水・国交・環境とする。経済的理由で国土が放置されていく一方で、動機不明の国土買収が静かに進みゆく日本。国家として国土をどう衛り、管理していくか──総合的な見地から対策を講ずるものだが、成立には時間を要する可能性がある。

 なお仏英の海岸部は、長年にわたって公有地化、トラスト化を進めているが、安全保障を前面に打ち出すことなく、環境保全の立場から買い進めている。併せて監視強化の効果も上げている。


《残された課題》

 ここ2年で11道県(検討中が6県)が水源地区保全条例を制定した。

 水源地売買の「事前届出」を義務付けしたのは、法律が謳う「事後届出」では効果が薄いとみたからだ。本件について、政府より先行して自治体が踏み出したことの可笑しさを再考する必要があろう。安全保障にかかわる措置を自治体条例がカバーしている。

 ただその施行プロセスで自治体は頭を抱えている。2012年、北海道は土地所有者1万1000人に対し、新条例の通知を郵送したが、5割近くが宛先不明で戻ってきた。税務当局も加わり究明に努めたが、最終的に地権者不明は45%。これでは対策を講じようがない。経済のグローバル化が止まらない一方で、国内制度の綻びが本格化している。行政は活路を別手段に求めはじめた。

 土地台帳(固定資産課税台帳)の不備も深刻だ。登記行為が任意だから、法務局の登記情報は売買・相続の一部情報でしかない。未登記率のデータも存在せず、登記簿があてにならなくなっている。結果、やむなく160歳の土地所有者に「死亡者課税」をしたり、表ざたになる前に処理(課税保留)してしまうケースが登場している。こういった矛盾が減っていく要因は見当たらない。

 これらの現象は辺境部が大半で、税額は数%以内の話にすぎず、微々たるものかもしれない。しかし、都市部へと波及・蔓延していくのは時間の問題だ。登記、地籍の本格再編にとりかかるべき時だろう。


   躓きのはじまり

 私たちは今、経済以外の分野での視野と関心が極度に狭まっている。現下の問題に目をそむけ、退路を断たれてもなお背を向けている。

 国土の安全保障を腫物のように扱いつづけ、土地資源の不明化・バルク化に黙認を決めこみ、なんら対応していない。しかも、こうした〈負の遺産〉を後世代に押しつけようとしている。平和も祈ってさえいれば実現できると思い込んでいる。

 何もかもがいい加減では、困るのは次の世代だ。このことを数が多い世代、中高年世代はぬかっている。責任を果たすべきではないか。躓きのはじまりは現世代であったといわれないためにも。



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 〈 追記:参考 〉

これ見て呆れまくり [南鮮と仲良くしよう]煽動はやめれNHKwww.dailymotion.com



この後が気になる
【話題】 「韓国人が土地を買いたいと言っている」・・・対馬に住むというネット民の報告 - キムチ速報



MERS、九州観光にじわり影響 ホテル、高速船でキャンセルも 専門家「冷静な対処を」 - 西日本新聞

九州は地理的に近く、MERSの“流入”を心配する声が強まっているが、専門家は「韓国からの観光客に過敏になる必要はない。訪韓する人はマスクなどで対策を」と冷静な対応を呼び掛けている。

九州大グローバル感染症センターの下野信行センター長は「MERSは空気感染はせず、同じ飛沫(ひまつ)感染でもインフルエンザのように感染力は強くないとされる。韓国人観光客に過敏になる必要はない。訪韓する人は医療機関にはなるべく行かず、マスク、手洗いなどを徹底してほしい」とアドバイスしている。

これを簡単に信じてお気楽でいられるとは思えませんがね。


対馬保健所によると、市民などから「(韓国人と)一緒に温泉に入っても大丈夫か」などの問い合わせも11件寄せられたという。

問い合わせた市民の方々の疑問の方が「正常な反応」であり、また南鮮人には近づかないことです。
記事では「飛沫感染」と言い切っていますが、海外報道では昨年夏の時点で「空気感染の恐れ」も指摘されています。↓
MERS-CoV | Infection Prevention and Control for Hospitalized Patients | CDC

MERS may be airborne, scientists say - CNN.com

WHO: Middle East Respiratory Syndrome could be airborne



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【朝鮮パンデミック】韓国南東部・釜山で初のマーズ陽性反応ー 対馬をはじめ九州は大丈夫?

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保守速さん
http://hosyusokuhou.jp/archives/44335241.htmlより

中東呼吸器症候群(マーズ)清浄地域だった釜山で、初の1次陽性反応が出て、防疫当局が緊張している。


釜山市は6日、嘔吐の症状などで隔離されているAさん(61)の検体を分析した結果、マーズ陽性反応が出たと明らかにした。疾病管理本部の検査に時間がかかる時は、傘下の保健環境研究院に依頼して、主に別の検査を行ったが、この検査で陽性反応が現れたのだ。


Aさんは、隔離される前まで嘔吐の症状に加えて、発熱や咳などの呼吸器症状は見られなかった。
疾病管理本部では確定判定を下されていない状況だが、市保健環境研究院も疾病管理本部のような
診断装置を使用している。


この男性は先月27~28日、京畿道富川の親戚の葬儀場を訪れた。葬儀場に一緒にいた人が6日、マーズ感染者が確認されたため、Aさんは密接接触者に分類され、この日の午前、保健所を通じて市内の
病院の陰圧病室に隔離された。


この男性の奥さんは、自宅に隔離されている。Aさんは釜山に帰ってきた後に、今月3日、タクシーに乗って街の病院2カ所を訪問したことでは把握した。4日から2日間は家で妻と一緒にとどまった。


市はAさんと接触した医療スタッフとタクシー運転手、 Aさんの妻などの周辺人物について、幅広い
精査に入った。一方、釜山では、忠南の作業場でマーズ患者と一緒に働いていた別の60代の男性1人が陰圧病室に隔離されている。


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南鮮北部のソウル近郊で発生したMERSが九州・西日本のすぐ側、南部の釜山まで到達してしまった模様です。

中東呼吸器症候群(MERS)に関するQ&A|厚生労働省によると、

問5 どのようにしてMERSに感染するのですか?


答 人がどのようにしてMERSに感染するかは、まだ正確には分かっていません。患者から分離されたMERSコロナウイルスと同じウイルスが、中東のヒトコブラクダから分離されていることなどから、ヒトコブラクダがMERSウイルスの感染源動物の一つであるとされています。その一方で、患者の中には動物との接触歴がない人も多く含まれています。家族間や、医療機関における患者間、患者-医療従事者間など、濃厚接触者間での感染も報告されています。

と、たったこれだけの説明です。
この感染症についてはまだよくわからない、ということはわかります。

また次のように、

問6 MERSはヒトからヒトへ感染しますか?


答 海外の感染予防対策の実施が不十分な医療機関等においては、患者から医療従事者や他の患者に感染(二次感染)した例が報告されています。ただし、季節性インフルエンザのように、次々にヒトからヒトに感染すること(持続的なヒト-ヒト感染)はありません。

ヒトーヒト感染はないと説明されていますが、
「ありません」と断言しちゃっていいのでしょうか。
これって何かおかしくないですか?


6月4日の時点で三次感染拡大を朝日新聞が報じており、
韓国、MERS感染者さらに5人 「三次感染」増える:朝日新聞デジタル

海軍、空軍の兵士まで
【韓国海軍】MERS感染疑いで兵士83人を隔離措置|保守速報
この有り様です。

たった一人の感染者が原因でここまで感染が広がるものでしょうか。


MERSのニュースを知って、初めて検索して見た時は大体次のような情報が多かったので

South Korean MERS outbreak is not a global threat : Nature News & Commentより
• MERS-CoV is not a human virus: ヒトに感染するウイルスではない

• MERS-CoV mainly spreads in hospitals: 主に病院で感染が広まる

• South Korea is doing a great job: 南鮮での対策は良くとられている

• MERS is not SARS: マーズとサーズは別物

• This outbreak is not that big: この感染拡大はそれほど大きなものではない


この後に日本の報道(南鮮発も含む)を見てみて大変なズレを感じました。

要は接触・飛沫感染なの、何なの? それにしては、ここまで広がるのは不自然じゃない?
と思い「MERS airborne:空気感染」で検索してみると

MERS virus 'may be airborne', scientists warn | Daily Mail Online
MERS may be airborne, scientists say - CNN.com
WHO: Middle East Respiratory Syndrome could be airborne

このように、
昨年7月には既に「空気感染の疑いは持っておいた方が良い」という内容の記事が出ていて何件もヒットしました。

ところがご当地では6月5日に初めて「限られた空間において」と注釈付きで、空気感染の可能性が指摘されたようです。
【韓国MERS】空気感染の可能性|保守速報


日本の厚生労働省は暢気すぎやしませんか?

南鮮のグダグダ・後手後手迷走っぷりは今に始まったことではありませんが、
日本がそのとばっちりを受けて良いわけはありません。

そもそも南鮮人のこの身勝手で甚だしく無責任な振る舞いの数々、国の対策がどうのという以前の問題です。
こんな連中のせいで近隣諸国に被害が拡散されるのは理不尽すぎます。

MERS患者が搭乗したアシアナ機、消毒しないまま名古屋までフライト


【国家の威厳崩壊中‥】 韓国人「嘘を付き、隔離を拒み行方不明に成っていた韓国人女性2人が香港で逮捕される」 : 世界の憂鬱
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【韓国崩壊の危機‥】 韓国人「ソウル江南に住むマーズが疑われる患者が失踪‥」 : 世界の憂鬱

【ソウル崩壊】 韓国人「マーズ確定隔離通知を受けた医師が1千400人規模のイベントに参加していた」 : 世界の憂鬱


こんな民族をメインの商売相手にしている対馬や、呼んでもないのに仕事(世界最古の職業とか)や旅行でやってくる地域は、彼らと彼らが運んでくるウイルスを警戒してもしすぎることはないと思います。


また、日本国内にはこんな記事を書いた医師も存在します。
MERS感染拡大 韓国政府は悪くない WEDGE Infinity(ウェッジ)

確かに、MERSウイルスは殆ど解明されていないのですから万全な対策をとるのは困難かもしれません。
百歩譲って南鮮の「政府」は悪くなかったとしましょう。
記事中の「世界中どこの国で起きてもおかしくはなかった 」のもそうです。
ならば余計日本は、いえ他の国々だって注意すべきです。

南鮮からの入国者スクリーニングは最大限強化する必要があるということになります。


ちなみにこの医師、
この記事とは違う視点もお持ちのようです。
f:id:b-co811:20150607051103p:plain
U-1速報 : 『MERSの感染拡大に韓国の責任はない』と日本専門家が示唆。日中はむやみに嫌韓感情を高めるなより
面白い先生ですね。


私はこの件を含む他の沢山の問題も、政府の善し悪しの問題ではないと思います。
半島社会を形作る半島人らの特質や人間性が歴代の南鮮「政府」や、今回もこの「現象」を生み出したのではないでしょうか。

韓民国はしばらくの間国民の出獄出国を止めて周りの国への迷惑防止に努めてはどうでしょうか。
感染患者隔離どころか、あの国自体を隔離閉鎖していただきたいものです。



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[古森義久]【アメリカ人学者たちの傲慢と偏見】

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こんなサイトがあると知り
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NEXT MEDIA "Japan In-depth"[ジャパン・インデプス]

見ていると古森氏の投稿記事が出ていたので、今日はその中からひとつ。


http://japan-indepth.jp/?p=18167
2015/5/11
【アメリカ人学者たちの傲慢と偏見】
~研究者ら187名による「日本の歴史家を支持する声明」~

古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」


もし日本の一群の歴史学者たちがアメリカのオバマ大統領に書簡を送り、「アメリカ全体として過去の過ちを反省や清算することが大切だ」などと言明したら、どうなるだろうか。他国の元首に特定の言動を求め、その国の国民全体にも、「反省や清算」を要求するなどというのは、そもそも学問の世界を離れてのなまぐさい政治活動だとされるだろう。他国の国のあり方や心の持ち方にあれこれ文句をつけるという傲慢さの非常識を厳しく責められるだろう。

しかしアメリカの歴史学者たちは、日本に対して平然とそんな行動を取るのである。日本の大手新聞各紙が5月7、8日に報道した「日本研究者187人の声明」がそれだ。慰安婦問題での長年の日本糾弾で知られるコネチカット大学の歴史学者 アレクシス・ダデン教授らが中心となり、安倍晋三首相にも直接に送ったという声明である。

声明は要するに慰安婦問題で日本の態度や心のあり方をあれこれ指示しているのだ。具体的には「日本政府が過去の植民地支配と戦時の侵略の問題に立ち向かう」とか「過去の過ちについて全体的で偏見のない清算をする」など、要するに高所からお説教である。特定の政治的な立場の押し付けでもある。


日本について研究しているというアメリカやイギリスの学者、研究者が主体だが、アメリカやイギリスの「過去の植民地支配と戦時の侵略」というテーマはどうなのだろう。この両国は植民地支配と他国への軍事攻撃という意味での侵略は数え切れないほど重ねてきた。自国の元首に同じ要求をぶつけたらどうだろうか。


そもそもアメリカの日本研究者とはなんなのだろう。単なる研究者、学者ではないか。選挙によって選ばれた議員でも元首から任命された官僚でもない。アメリカの国民を代弁する立場にもない。そんな人たちが数を頼んで、圧力をかけるように、日本国や日本国民に向って命令や指導をするのである。日本はいつも特定の考え方を保たねばならないと強圧する思想警察のようでもある。敗戦後の日本を占領したGHQ(連合軍総司令部)のメンタリティーさえ感じさせる。


かつての歴史ではアメリカになにからなにまで支配される中南米のバナナ生産国が「バナナ・リパブリック(共和国)」と、なかば侮蔑的に呼ばれることがあった。今回のアメリカ人学者たちの高圧的な指示は日本をバナナ共和国扱いしているともいえる。


予想どおり朝日新聞はこの声明を金科玉条のように大々的かつ賞賛をにじませて報道した。慰安婦問題での朝日新聞の特定の政治的主張に合致するところがあるからだろう。


日本はアメリカの防衛力に依存しているとはいえ、精神的な植民地でも属国でもない。
たかが外国の研究者、学者の集団に国のあり方を命令される立場にはないのである。この基本原則は日米両国が第二次大戦での敗者と勝者だったという歴史の重みを越えての戦後70年の現実なのだといえる。


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朝日新聞大喜び

歴史「偏見なき清算を」 米の日本研究者ら187人声明:朝日新聞デジタル

日本の歴史家を支持する声明(全文):朝日新聞デジタル


これに先駆けて、米国マグロウヒル社出版の教科書記述内容問題にアメリカ人学者らが対抗してきた件があります。

【主張】慰安婦問題で声明 偏見抜きの史実で議論を(1/2ページ) - 産経ニュース
http://www.sankei.com/column/news/150513/clm1505130003-n2.htmlより


 米大手教育出版社「マグロウヒル」の世界史教科書には、「日本軍は約20万人の女性を慰安所で働かせるために強制的に徴用した」「慰安婦を天皇からの贈り物として軍隊にささげた」などの記述がある。外務省が是正を求めたが、執筆者を含む米国の学者ら19人は修正を拒否する声明を出した。


 この19人と今回の声明に署名した研究者は重複している。


 「20万人」や「強制連行」についての確信的根拠を持たないなら、研究者らはまず、米教科書やクマラスワミ報告書の修正に力を尽くすべきが筋であろう。


最近になって古森氏の記事で、かれらを批判する、別のアメリカ人歴史学者の存在が明らかになっていますね。

【緯度経度】米歴史教科書慰安婦記述へ批判、米学界に「新風」 古森義久(1/3ページ) - 産経ニュース

批判を表明したのは米国ウィスコンシン大学博士課程の日本史研究者ジェイソン・モーガン氏で、米国歴史学会(AHA)の機関誌への投稿という形をとった。

とのことで、これは頼もしい!

古森氏が日本に紹介してくださったお蔭でその存在が知れ渡ったマイケル・ヨン氏が、この情報に一役かってくださっていました。

ヨン氏はFBでジェイソン・モーガン氏がAHA(American Historical Association Home Page | AHA)へ投稿された論文を紹介してくださっています。
この文章を昨日14日、別エントリーとしてコピペさせていただきました。


*上記の産經新聞記事中にある要約文
http://www.sankei.com/world/news/150502/wor1505020018-n2.html
http://www.sankei.com/world/news/150502/wor1505020018-n3.html によると

モーガン氏はこの声明への反論を4月下旬にまとめて同誌に投稿するとともに、他のサイトなどで公表した。その反論の骨子は以下のようだった。

 ▽19人の声明は慰安婦に関する日本政府の事実提起の主張を言論弾圧と非難するが、非難の根拠となる事実を明示していない。

 ▽声明は吉見義明氏の研究を「20万強制連行説」などのほぼ唯一の論拠とするが、同氏も強制連行の証拠はないことを認めている。

 ▽声明は米国の研究者も依拠したことが明白な朝日新聞の誤報や吉田清治氏の虚言を一切無視することで、歴史研究者の基本倫理に違反している。

 ▽声明は日本側で慰安婦問題の事実を提起する側を「右翼」「保守」「修正主義」などという侮蔑的なレッテル言葉で片づけ、真剣な議論を拒んでいる。

 ▽声明は日本政府の動きを中国などの独裁国家の言論弾圧と同等に扱い、自分たちが日本政府機関からの資金で研究をしてきた実績を無視している。

モーガン氏は、「米国の日本歴史学界でこの19人の明白な錯誤の意見に誰も反対しないという状態こそ学問の自由の重大なゆがみだと思う」と強調した。


ということです。


おしまいに、日本人にも「ゆがみ」があることを付け加えておきたいと思います。
朝日新聞がご丁寧に発表した表明参加者たちの中には多数の日本人名が見うけられます。
報道では「アメリカ人」学者とされていますが、これは「主に」で、日本名の教授や米国以外の大学からの参加者も加わっています。
カナダ、トロント大学からも6名いて、内3名は日本名(日本人なのか日系カナダ人なのかは不明)。
この人達はグローバルな活躍と、一方的に日本だけを批難して貶めることを混同しているのではないでしょうか。
そしてカナダから何故か大学教授ではない日本人が一名参加しているのに気が付きました。

サトコ・オカ・ノリマツ、アジア太平洋ジャーナル『ジャパン フォーカス』エディター

言わずと知れたカナダ在住の抗日・放射脳な活動家です。
この手の「インターナショナルな」日本人らが海外で「日本の軍国主義がー」とやってるわけですね。

ウェブ活動などで英文記事を引用する際は、Japan Focusの記事ではないか、よく確認・注意しましょう。やたら長くて分かりにくいが実は日本下げ、例えば麻生元首相下げの記事だったり、という具合ですから。

本当に日本人も歪んでます。





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合邦と植民地

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colonization と annexation の使い分けについて前々から疑問を持っていたので、この記事はとてもためになりました。


http://ironna.jp/からの記事です。


http://ironna.jp/article/1324
合邦と植民地は大ちがい! 
大人の国・英国の歴史認識

『歴史通』 2013年1月号
渡部昇一(上智大名誉教授)


ピサロの侵略と「コロニー」

 明治43年(1910年)、日本と韓国は合邦しました。

 これを日本による韓国の「植民地化」ととらえる考え方があり、むしろ、それが一般的な風潮となっています。もちろん、韓国や北朝鮮は政治的な利害からそう主張している。しかし、それは日本と朝鮮半島という、地域的にも思想的にも限定的な、狭い見かたにすぎません。アジアに対する欧米の帝国主義、植民地主義が当然とされていた時代の、世界史的な視野で見るべきだと思います。

 たとえば、英語の文献では、日韓合邦のことを「アネクセイション」( annexation )と表現しています。これは「植民地化」を意味する「コロナイゼーション」( colonization )とはイメージがまったく違う。歴史を公平に客観的に見るには、言葉が当時どのように使われていたかを知ることも重要です。現代の常識で過去を断罪すべきではありません。頭ではわかっていても、ついついいまの物差しで歴史を計ってしまいがちです。

 そこで、少々衒学めきますが、初めに「アネクセイション」と「コロナイゼーション」の違いをイギリスの辞典などにもとづき、できるだけわかりやすく述べておきたいと思います。

 まずコロナイゼーションの語源を考えてみましょう。“ colonization ”の“ colo ”は「耕す」とか「居住する」という意味です。このラテン語の動詞の過去分詞“ cultum ”は「耕された」「洗練された」の意で、「耕作」「教養」の意味の英語「カルチャー」( culture )も、そこからきています。

 “ cultum ”の派生語である“ colonia ”(コロニア)は、「農場」「領地」という意味でした。元来はローマ帝国の拡大にともなって新たな征服地へ移り住んだローマ市民、とくに「ベテラン」( veteran )と呼ばれる除隊した兵士たちが住んだ土地のことです。彼らはローマ市民権を持ち、駐屯兵として帝国防衛の役割も担いました。「屯田兵」のようなものと言えばわかりやすいでしょうか。

 イギリスをみてみると、ブリテン島にはローマのコロニアが九つありました。よく知られている地域では、ロンドン、バース( Bath )、チェスター、リンカーンなどがあげられます。いずれも当時はローマのコロニアでした。

 さて、ローマ時代には「農場」「領地」という意味だった「コロニア」が、やがてギリシャ語の「アポイキア」( apoikia )の意味にも使われるようになりました。ギリシャはシュラキウスやイタリアの島に入植し、独立・自治の・植民地を建設した。それが「アポイキア」で、メトロポリス(母なるポリス)から独立して住むところという意味でしたが、それもラテン語ではコロニアというようになったのです。

 では現代英語で「植民地」をさす「コロニー」( colony )という言葉はいつから使われるようになったのか。

 最初にコロニーという言葉を英語で使ったのは、リチャード・イーデンという16世紀イギリスの翻訳家です。ペルーのインカ帝国を滅ぼし、文明を破壊した例のスペイン人、フランシスコ・ピサロの行状を書いた本の翻訳のなかで彼が初めて「コロニー」という言葉を使いました。1555年に出版した“The Decades of the New Worlde, or West India ”(「新世界あるいは西インドの数十年」)という本に出てきます。

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/a7/Eden%27s_Decades_1555.jpg
Decades of the New World - Wikipedia, the free encyclopedia
(管理人より)


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植民地に犯罪者を送り込んだ英国

 現代語の「コロニー」、つまり「植民地」という言葉は、大航海時代、ペルーの先住民族を絶滅にまで追い込んだピサロの非道な侵略・掠奪を連想させる言葉として英語に入ったわけです。1555年といえば、毛利元就が厳島の戦いで陶晴賢を破って中国地方を支配する基礎を固めた年。織田信長が桶狭間の戦いで今川義元に勝利する5年前です。

 「植民地をつくる」という動詞コロナイズ( colonize )、そして「植民地化」という名詞コロナイゼーション( colonization )は、1770年、エドマンド・バークが最初に使いました。著書“ The Thoughts on the Present Discontents ”(「現代の不平家についての考え」)のなかで彼は、“ Our growth by colonization and by conquest ”(イギリスのコロナイゼーションと征服による成長は……)という言い方をしています。

 その六年後の1776年に刊行された、アダム・スミスの『国富論』には“ The discovery and colonization of America ”(アメリカの発見と植民地化)という用例が見られます。インディアンを蹴散らして強引に土地を奪うというニュアンスです。日本でいえば田沼時代にあたります。

 イギリスの詩人・作家であるロバート・サウジーは、晩年には『ネルソン提督伝』を書き、小説家のウォルター・スコットの推薦で桂冠詩人にもなっていますが、若いころは、いまでは忘れられている「パンティソクラシー」( pantisocracy )、日本語にすれば「万民同権社会」なるものを夢見た人で、ドン・マヌエル・アルバレース・エスプリエーラというスペインの旅行者が書いたという設定の“ Letters from England ”(「ロンドン通信」1807年)に、次のように書いています。

「犯罪者をもって植民させる( colonize )ことはイギリスのシステムの一つである」

 つまり、イギリスが植民地に犯罪者を送り込んでいることを批判しているのです。彼はまた、英国人の生活は、とくにその産業的・商業的な拡大( industrial and commercial expansion )という面で非常な危険にさらされているとも言っています。

 この頃から、英語の「コロナイズ」には侵略・掠奪というイメージがあり、イギリスの心ある人たちはみな悪い意味で使っていたのです。



日韓合邦は「アネクセイション」

 1830年代になると、アメリカでは、「コロナイゼーショニズム」( colonizationism )=植民地主義とか、「コロナイゼーショニスト」( colonizationist )=植民地主義者という言葉も用いられるようになりました。これなどはまったく批判的な意味合いを持っています。

 もともと悪い意味ではなかった「コロニア」という言葉が、大航海時代に白人が有色人種の国を征服していくにしたがって「コロナイズ」という言葉を生み、「掠奪」「侵略」というイメージを持つようになったのです。

 その「コロナイゼーション」という言葉は、日韓合邦については私の知る限り、イギリスの文献にはまったく現れません。すべて「アネクセイション」( annexation )と書かれています。

「アネクセイション」という言葉は、イギリスの哲学者フランシス・ベーコンが1626年より以前に書いたといわれる“ Union England and Scotland ”(イングランドとスコットランドのユニオンについて)のなかで、「二つの国(民族)の土地から、一つのコンパウンデッド・アネクセイション(複合した合併)をなす……」と、平等というニュアンスで使っています。

 1875年には、ジェームズ・ブライスという法学者・歴史学者が、“ The Holy Roman Empire ”(神聖ローマ帝国)のなかにこう書いています。
「フランスは、ピーモントをアネクセイション(合併)することによって、アルプス山脈を越えた」。ここにも「掠奪」という意味合いはまったくありません。

 動詞の「アネックス」( annex )は、subordination(従属関係)なしに、という意味を元来含んでいて、もともとどちらが上というニュアンスはなかったのです。

 1846年に出た『英国史』、元来はラテン語の本で、それ以前に出版されているのですが、そのなかには「ジュリアス・シーザーはブリテンをローマ帝国にアネックスした」という記述があります。この場合も、ローマの文明をブリテン島におよぼしたというニュアンスが強く、掠奪したという感じはない。


略奪、征服の意味はない

 さらに「アネクセイショニスト」( annexationist )という言葉は、アメリカにおけるテキサス併合論者の意味です。1845年に実現したアメリカの「テキサス併合(アネクセイション)」という言葉にも、「掠奪」や「征服」という意味はありません。

 このことをふまえて、『ブリタニカ百科事典( Encyclopedia Britannica )』一九二二年の十二版を見てみましょう。日韓合邦の翌年、1911年の十一版にはまだ記載がなく、12年後に発行された十二版の「 KOREA 」(コリア)の項目のなかに、初めて日韓合邦のことが出てくるのです。

 1771年にグレートブリテンのエディンバラで第一版が出たブリタニカは、イギリスのみで発行されていた時代には『ロンドン・タイムズ』と並び情報の公平さで世界的に評価され、世界中の知識人に読まれた信頼度の高い事典です。そこには、こう書かれています。

「1910年8月22日、コリアは大日本帝国(Japanese Empire )の欠くべからざる部分( integral part )になった」

 ここで「欠くべからざる部分(インテグラル・パート)」という書き方をしていることからも、・植民地・とは見なしていないことがわかります。

 「国名はおよそ500年前に使われていた朝鮮( Chosen )に戻った。(略)日本が外交権を持った1906年以来、日本によって秩序ある体系的な進歩がはじまっていたが、これ(合邦)によってその進捗はさらに確かなものになった」。ただ、「コリアン・ナショナリズムの抑圧を批判する人もいる」ということも書かれ、以下、およそ次のような趣旨の記述が続きます。

「警察制度を整備して内治をすすめたことによって泥棒や強盗団が跋扈していた辺鄙な地方の治安もよくなった。朝鮮の平穏さは、併合(アネクセイション)以来、曇ることなく続いていたが、一九一九年三月に突如、騒乱が起こった(渡部注 三・一運動)。これはウィルソン米大統領の唱えた民族自決主義(セルフ・ディタミネーション)の影響であったが、ただちに鎮圧された。日本は慎重に改革を進めていたが、これを見て計画を急ぐことになった。注目すべきことに、軍人だけでなく民間人でも朝鮮総督に就任できることになり、総督は天皇のみに責任を負う立場から、首相に従うこととなった。


朴正熙が日本から受けた恩恵

 原(敬)首相は、教育・産業・公務員制度について日本人と朝鮮人との差別を取り除く政策を進めていると声明し、こうして朝鮮に再び平穏が戻った。その後も不満分子はときどき騒いだが、みごとに押さえられていた」。

 朝鮮人が暴動を起こすのは日本統治時代に限ったことではありません。独立後も済州島事件( 1948 )や光州事件( 1980 )など、ずいぶん反乱が起こっている。日本時代よりむしろ多いくらいです。
(*済州島四・三事件 - Wikipedia *5.18光州民主化運動 - Wikipedia:管理人より)

 それはともかく、この1922年版ブリタニカの記述にも、すべて「アネクセイション」という言葉が使われているのです。

 それから4年後の1926年に発行された第十三版には「アネクセイション・オブ・コリア」という項目がたてられ、「日清・日露戦争は、朝鮮が日本の心臓に向けられた短刀となることを防ぐための戦いであった」と記し、「朝鮮の宮廷人たちの気まぐれで自殺的な外交をやめさせるためには日本が合併するより方法がなかったが、とどのつまり、伊藤博文の暗殺によってクライマックスを迎えた」と、日本に対して非常に同情的に書かれています。

 日本との合邦後、朝鮮半島ではいかに経済が発展し、安定したかというようなことも縷々述べられています。「朝鮮を治めるのは日本の責任であると東京の政府は考え、朝鮮王家は、高い名誉と潤沢な経済支援を受けることになった」と記されているのは、朝鮮の李王家に対する日本の丁重な遇し方のことです。日本の皇族に準ずる待遇をし、李垠皇太子のもとには梨本宮家の方子女王が嫁いでいます。侵略によって征服された「植民地」の王家であれば、本国の王家と婚姻を結ぶなど、ありえない話です。朝鮮王でシナの皇族の娘を妻とした例はありません。

 それまでの朝鮮半島は清国に支配されていました。朝鮮は明に建ててもらった国ですから、明が清に滅ぼされたとき、義理立てして抵抗したものだから、清に徹底的にやられてしまった。清の属国だった時代が記憶に残っている人の話を聞かないと、そのひどさはなかなかピンときません。私は、たまたま元北朝鮮の脱走兵だった人を一年ほど家に住まわせていたことがあります。旧制の平壌中学を出た教養のある人でしたが、彼の話によれば、清末の朝鮮がなぜあれほど汚かったかといえば、清潔にしておくと清の兵隊がやって来るからで、だから彼らさえ近寄れないほど汚くしたのだというのです。おいしい食べ物があるとすべて持っていかれるから料理も発達せず、口にするのはおこげくらいのもの。倭寇が怖くて昔から海にも出られないから海の魚の料理の発達もなかったのだそうです

 だから、日清・日露戦争のときも朝鮮の民衆は日本に協力的でした。合邦についても、ブリタニカにもフェアに記載されていたように、たしかに反対派もいたしテロリストもいたけれど、大方の民衆は大喜びだったわけです。

 合邦のおかげで朝鮮人がいかに救われたかは、1963年から79年まで五期にわたって韓国大統領をつとめた朴正熙の伝記を読めばわかります。

 朴正熙は極貧の家で七人目の子供として生まれています。日韓合邦以前の貧しかった朝鮮はいまの北朝鮮のようなもので、多くの人が春窮で餓死していました。だから、七人目の子など育つわけがありませんでした。それが日韓合邦のために生き延びることができただけでなく、日本の教育政策によって学校にも行けた。小学校で成績優秀だったために、日本人の先生のすすめで学費が免除される師範学校に進み、さらに満洲・新京の陸軍軍官学校に進学して首席で卒業したため、とくに選ばれて日本の陸軍士官学校に入りました。日本と合邦していなければ考えられないコースをたどって、結果的には韓国大統領として「漢江の奇跡」と呼ばれる経済成長を故国にもたらしたのです。これは日韓合邦によって韓国が受けた恩恵のめざましい一例と言えるでしょう。この種の例は無数にあったのです。


「われわれは日本を見習うべし」

 日韓合邦時代における朝鮮人の暴動や反乱は、満洲事変以来すっかりなくなりました。
それは、かつての朝鮮の支配民族だった清の満洲人に対して、朝鮮人が平等になったからです。満洲人に限らず、漢族のシナ人も、それまでずっと朝鮮民族を見下していて、朝鮮人はいじめられっぱなしでした。ところが、日韓合邦によって「自分たちは日本人だ」と言えるようになった。創始改名運動が起こり、日本人名になると、数千年間つねに頭を押さえつけられていた満洲人やシナ人に対して大いばりできたのです。それからは、いっさい朝鮮人の反乱がなくなりました。「日韓同祖論」が流行り、朝鮮の中学は修学旅行で伊勢神宮に参拝するようにもなった。戦争のときは志願兵も多かったし、朝鮮人の特攻隊員も数多くいました。

 明治政府には、「コロナイゼーションはやらない」という覚悟が強くあったと思います。台湾は日清戦争後の明治28年(1895)に日本に併合されましたが、その約十年後に、『ロンドン・タイムズ』は以下のような主旨のことを書いています。

 「わずか十年の間に台湾の人口は数十万人ふえた。イギリス、フランス、オランダも台湾を植民地にしようと思えばできたが、あえてそうしなかったのは、彼の地が風土病と伝染病が蔓延する瘴癘の地だったからである。しかも、山奥の原住民はともかく、住民の大部分はシナから逃げてきた盗賊だ。台湾譲渡を決めた下関条約の全権大使、李鴻章は、「日本に大変なお荷物を押しつけてやった。いまにひどい目に会うから見ていろ」と内心ほくそえんでいた。ところが日本は大変な努力をして風土病を克服し、人口を飛躍的に伸ばした。西洋の植民地帝国は日本の成功を見習うべきである」

 『ロンドン・タイムズ』が評価した日本統治は、朝鮮でも同じように行われていました。

 台湾合併は50年、日韓合邦は35年続きました。戦後、韓国に戻って初代大統領になった李承晩の反日運動がなければ、そして半島が南北に分かれないままだったら、そうしてあと15年、台湾と同じく、50年間日本との合併が続いていれば、日本も台湾に近い感情で韓国に対してつき合うことができていたのではないか……。これは空想にすぎませんが、そんな気がしています。


   渡部昇一(わたなべ・しょういち)
上智大学名誉教授。英語学者。文明批評家。1930年、山形県鶴岡市生まれ。上智大学大学院修士課程修了後、独ミュンスター大学、英オクスフォード大学に留学。Dr.phil.,Dr.phil.h.c.(英語学)。第24回エッセイストクラブ賞、第1回正論大賞受賞。著書に『英文法史』などの専門書のほか、『知的生活の方法』『日本興国論』などの話題作やベストセラー多数。小社より、『読む年表 日本の歴史』好評発売中。



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欧米人でも詳しく勉強した人でなければ、よく分からないまま植民地や併合という言葉を使っているのではないかと思われます。
しかも日本といえば寿司とゲイシャとアニメ、くらいの認識の人たちが大多数です。
そんな一般人の中の、ちょっとだけお勉強ができたり「何か良いことをしたい」「意識が高い、そんな自分が好き」な人々に、支那朝鮮勢力やお仲間のアメリカ人(自称)歴史専門家らが「日本悪玉論」を吹き込むのは、そりゃもう楽しくて仕方ないでしょう。

対抗するには今日の渡部教授の記事の内容を英語で発信できれば良いのですが、自分の力では歯が立ちません。
ウェブ上に英訳記事がないか探したところ、これに近い事が書かれているかもしれない渡部教授の英文著書がありました。

www.peterlang.com

英語が大丈夫なかたはご参考に。

私はというと、「 Unbroken 」程度で汗だく、
先日取り寄せたハワイ大学マノア校名誉教授のジョージ・アキタ氏の本(参考:米国教科書のマグロウヒル社が「竹林はるか遠く」でもやらかしてる件 - 天晴!にっぽん
になると、もう放心状態です。
いやいや、頑張るしかありませんが。
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ちなみに、この本読もうかなというかたで、カナダにて購入可能なかたはチェーン店の Indigo/Chapters で探してみて下さい。
ペーパーバック版が何故か定価の2割程安く、送料も無料でした(4月上旬時点で在庫は無く入荷待ち)。


渡部昇一教授に話を戻すと、氏は「朝日新聞を糺す国民会議」の議長で、「史実を世界に発信する会」顧問でもあるかたですね。
朝日新聞社の天敵です。今後このような天敵は増えていくでしょう。


希代の碩学である渡部昇一先生に関する情報サイトです
こんなサイトもありました。かなり中身濃いです。


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安倍首相の米議会演説に沈黙の中国、孤立する韓国

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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43686より
安倍首相の米議会演説に沈黙の中国、孤立する韓国
中国株式会社の研究(265)~安倍演説を評価する米国
2015.5.1(金) 宮家 邦彦


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 4月29日、安倍晋三首相が米議会で演説を行った。両院合同会議での英語のスピーチ、いずれも日本の首相としては初めてだ。練りに練った内容であることは分かっていたが、一抹の不安もあった。

 一部邦字紙は「米で評価二分」などと批判していたが、実際の米国での評価は予想以上に高かったようだ。

 こうした「米国の評価」と対照的だったのが中国と韓国の反応だ。中韓は対日政策で戦術転換を迫られるのか。今北京とソウルは一体何を考え、この日米蜜月にどう対応していくのか。

 今回は、現時点での限られた情報の中から、中韓両国の今後の対日政策の行方について考えてみたい。


  ■米国の評価

 いつもの通り、関連報道をまとめてみよう。4月30日現在、欧米主要紙報道はまだ出揃っていないが、批判的論調は一部下院議員の発言を引用したものであり、どちらかと言えば好意的な論調の方が多いようだ。ここに代表的報道の一部を再録しよう。当然ながら、米政府は今回の演説を高く評価している。

同盟国の首相として温かい歓迎を受けた安倍氏は中国に厳しいメッセージを送った。名指しこそしないものの、同首相は「アジアの海」につき「武力や威嚇は自己の主張のため用いないこと」と述べた。

(Receiving a warm welcome..., Abe...sent a stern message to China...he spoke of the “state of Asian waters,” saying countries must not “use force or coercion to drive their claims.” 4月29日付「ロイター」)

安倍氏の演説は、第2次大戦時の旧敵国で現在は最も緊密な同盟国である日米の和解を象徴しており、拍手とスタンディングオベーションで何度も中断された。

(Abe's speech was a moment symbolic of the reconciliation between former World War Two enemies who are now the closest of allies. He... was interrupted frequently by applause and standing ovations. 4月29日付「ロイター」)

マイク・ホンダ下院議員は「(慰安婦に言及してない)安倍演説はショッキングで恥ずべきものだ」と述べた。これに対し、コーエン下院議員は「第2次大戦の死と悲しみに関する安倍首相の認識は歴史的で適切だ。女性に関する言及も適切である。(安倍首相は)もう少し踏み込めたかもしれないが、それでも前進しており、賞賛すべきだ」。

(Rep. Mike Honda said the speech was "shocking and shameful" for omitting direct mention of the issue. Rep. Steve Cohen said "His recognition of the deaths and sorrow that World War II caused was historic and appropriate." "His mention of women was also appropriate, and while he could have gone further he went a goodly distance and should be commended." 4月29日付「U.S.A.Today」紙)

 訪米前、ワシントンのアジア村には安倍首相の姿勢に批判的な住人が少なくなかった。しかし、演説後、彼らの評価はかなり好転したようだ。

 日頃、安倍首相に批判的だったある識者ですら、「安倍首相は公の場で初めて日本の第2次大戦に関する責任を認め、過去の日本の指導者たちの謝罪を支持した」と述べている。決して悪くはない評価だと言えよう。


  ■中国・韓国の反応

 これに対し、韓国側の反応は予想通り厳しかった。

 韓国外務省報道官は4月30日午後声明を発表し、「安倍首相の演説は周辺国との和解をもたらす転換点になり得たにもかかわらず、そのような認識も誠意ある謝罪もなかった。非常に遺憾だ」、「日本は植民地支配や侵略、従軍慰安婦への人権蹂躙を直視し、正しい歴史認識を持って周辺国との和解と協力の道を歩むべきだ」と述べたという。

 中国も似たようなものだ。

 4月30日朝から中央電視台のニュース番組は安倍総理の発言を紹介しつつ、「演説で安倍首相は侵略の歴史や慰安婦問題について謝罪を拒絶した」と報じたらしい。

 4月30日付の国営新華社通信も演説の内容を伝えつつ、「敗戦から70年の年に日本政府は歴史を正しく省みず、日本の侵略や暴行の事実を隠している」、「謝罪を拒絶し、一部米議員の強い批判を招いた」などと報じたようだ。

 ここまでなら、驚くに当たらない。安倍首相が演説でいかなる内容を述べたとしても、中韓ともこれを歓迎するとは到底思えないからだ。あえて両国に違いがあるとすれば、中国の理由が戦略的、政治的であるのに対し、韓国側の理由がより感情的なものであることぐらいだろう。

 一方、中韓には微妙な温度差もある。

 報道によれば、在京中国大使館報道官は「安倍首相の演説に注目していた」と述べつつも直接の評価は避け、「歴史問題について対外的にどのようなメッセージを発信するかは、日本が平和・発展の道を堅持していけるかの試金石になると思う」などとコメントしたそうだ。

 また、報道によればある韓国外務省高官も、安倍演説は「期待外れで失望感がある」としつつ、「今年6月に朴槿恵大統領の訪米を控えており、表立った(対日、対米)批判はしにくい」と語ったそうだ。

 以上が事実であれば、実に興味深いではないか。行間から浮かび上がるのは恐らく中韓の本音だろう。


  ■安倍演説後の日米中韓関係

 最後に、いつもの通り、筆者の独断と偏見をご紹介しよう。以下はあくまで仮説であり、推測でしかないのだが、今回の安倍首相訪米の成果に関する現時点での筆者の見立ては次の通りである。

1、安倍首相は少なくとも米国で「謝罪」や「お詫びの気持ち」に言及するつもりはなかった

 今回の訪米の主題はあくまで日米2国間関係、特に同盟の増進だ。理由は簡単。豪州訪問の際と同様、重要なパートナーである米国との「歴史的和解」を内外に印象づけることで、今後の東アジアにおける日米豪共同の安全保障政策の実施をより円滑なものにすることが求められていたからだろう。

 そもそも、米側は安倍首相から「謝罪」など求めていない。世論調査でも37%の米国人が「既に日本は十分謝罪した」と答えただけでなく、24%が「日本からの謝罪は不要」と考えているそうだ。

 米国人はお人好しなのか、賢いのか、筆者には分からない。彼らは本能的に「広島・長崎」を想起したのかもしれない。

 当然ながら、演説で最も強く「謝罪」を求めていたのは韓国と韓国系米国人だ。しかし、彼らは安倍首相が何を言おうと必ずこれに反対する。その点は中国も同様だろう。そうであれば、少なくとも現時点で安倍首相が「謝罪」に言及する必要などなかったと思われる。

 
2、安倍演説に対する米国の評価次第で中国と韓国は対日宣伝のあり方を変えざるを得なくなる

 これは特に韓国について言えることだ。一方、中国は安倍首相がインドネシアや米国で「謝罪」に言及しないことをある程度読み切っていた可能性がある。中国がそれを承知で日中首脳会談に踏み切った可能性については前回書いた。

 恐らく今回の安倍演説でも中国側の判断は同じだろう。要するに、中国は表面上、メディアなどで従来の対日批判を続けるものの、実際には日中関係の一層の改善を引き続き、段階的ながらも模索していく可能性があるということだ。


3、米国の安倍演説に対する評価は間接的に韓国に対するメッセージである

 安倍訪米関連の米側関係者による一連の発言には共通するテーマがある。それは今回の訪米が「和解のモデル」であり、「和解は不可能ではない」というメッセージだ。

 言うまでもなく、このメッセージの対象は日本ではなく、韓国だ。韓国政府関係者もそのことはひしひしと感じているだろう。だからこそ、彼らは表立った対日、対米批判を控えているのかもしれない。

 米国を巻き込んで日本に圧力をかけるという韓国の従来の戦術は失敗しつつある。

 安倍訪米の成功で韓国は対日外交を修正する必要に迫られるはずなのだが、実はそれを阻んでいるのが政治的に弱体化しつつある朴大統領自身だ。ここに韓国外交最大のジレンマがある。



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米国連邦議会上下両院合同会議における安倍総理大臣演説「希望の同盟へ」 | 外務省



『希望の同盟へ』米国連邦議会上下両院合同会議 安倍総理演説-平成27年4月29日 - YouTube

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