安倍首相の米議会演説に沈黙の中国、孤立する韓国

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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43686より
安倍首相の米議会演説に沈黙の中国、孤立する韓国
中国株式会社の研究(265)~安倍演説を評価する米国
2015.5.1(金) 宮家 邦彦


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 4月29日、安倍晋三首相が米議会で演説を行った。両院合同会議での英語のスピーチ、いずれも日本の首相としては初めてだ。練りに練った内容であることは分かっていたが、一抹の不安もあった。

 一部邦字紙は「米で評価二分」などと批判していたが、実際の米国での評価は予想以上に高かったようだ。

 こうした「米国の評価」と対照的だったのが中国と韓国の反応だ。中韓は対日政策で戦術転換を迫られるのか。今北京とソウルは一体何を考え、この日米蜜月にどう対応していくのか。

 今回は、現時点での限られた情報の中から、中韓両国の今後の対日政策の行方について考えてみたい。


  ■米国の評価

 いつもの通り、関連報道をまとめてみよう。4月30日現在、欧米主要紙報道はまだ出揃っていないが、批判的論調は一部下院議員の発言を引用したものであり、どちらかと言えば好意的な論調の方が多いようだ。ここに代表的報道の一部を再録しよう。当然ながら、米政府は今回の演説を高く評価している。

同盟国の首相として温かい歓迎を受けた安倍氏は中国に厳しいメッセージを送った。名指しこそしないものの、同首相は「アジアの海」につき「武力や威嚇は自己の主張のため用いないこと」と述べた。

(Receiving a warm welcome..., Abe...sent a stern message to China...he spoke of the “state of Asian waters,” saying countries must not “use force or coercion to drive their claims.” 4月29日付「ロイター」)

安倍氏の演説は、第2次大戦時の旧敵国で現在は最も緊密な同盟国である日米の和解を象徴しており、拍手とスタンディングオベーションで何度も中断された。

(Abe's speech was a moment symbolic of the reconciliation between former World War Two enemies who are now the closest of allies. He... was interrupted frequently by applause and standing ovations. 4月29日付「ロイター」)

マイク・ホンダ下院議員は「(慰安婦に言及してない)安倍演説はショッキングで恥ずべきものだ」と述べた。これに対し、コーエン下院議員は「第2次大戦の死と悲しみに関する安倍首相の認識は歴史的で適切だ。女性に関する言及も適切である。(安倍首相は)もう少し踏み込めたかもしれないが、それでも前進しており、賞賛すべきだ」。

(Rep. Mike Honda said the speech was "shocking and shameful" for omitting direct mention of the issue. Rep. Steve Cohen said "His recognition of the deaths and sorrow that World War II caused was historic and appropriate." "His mention of women was also appropriate, and while he could have gone further he went a goodly distance and should be commended." 4月29日付「U.S.A.Today」紙)

 訪米前、ワシントンのアジア村には安倍首相の姿勢に批判的な住人が少なくなかった。しかし、演説後、彼らの評価はかなり好転したようだ。

 日頃、安倍首相に批判的だったある識者ですら、「安倍首相は公の場で初めて日本の第2次大戦に関する責任を認め、過去の日本の指導者たちの謝罪を支持した」と述べている。決して悪くはない評価だと言えよう。


  ■中国・韓国の反応

 これに対し、韓国側の反応は予想通り厳しかった。

 韓国外務省報道官は4月30日午後声明を発表し、「安倍首相の演説は周辺国との和解をもたらす転換点になり得たにもかかわらず、そのような認識も誠意ある謝罪もなかった。非常に遺憾だ」、「日本は植民地支配や侵略、従軍慰安婦への人権蹂躙を直視し、正しい歴史認識を持って周辺国との和解と協力の道を歩むべきだ」と述べたという。

 中国も似たようなものだ。

 4月30日朝から中央電視台のニュース番組は安倍総理の発言を紹介しつつ、「演説で安倍首相は侵略の歴史や慰安婦問題について謝罪を拒絶した」と報じたらしい。

 4月30日付の国営新華社通信も演説の内容を伝えつつ、「敗戦から70年の年に日本政府は歴史を正しく省みず、日本の侵略や暴行の事実を隠している」、「謝罪を拒絶し、一部米議員の強い批判を招いた」などと報じたようだ。

 ここまでなら、驚くに当たらない。安倍首相が演説でいかなる内容を述べたとしても、中韓ともこれを歓迎するとは到底思えないからだ。あえて両国に違いがあるとすれば、中国の理由が戦略的、政治的であるのに対し、韓国側の理由がより感情的なものであることぐらいだろう。

 一方、中韓には微妙な温度差もある。

 報道によれば、在京中国大使館報道官は「安倍首相の演説に注目していた」と述べつつも直接の評価は避け、「歴史問題について対外的にどのようなメッセージを発信するかは、日本が平和・発展の道を堅持していけるかの試金石になると思う」などとコメントしたそうだ。

 また、報道によればある韓国外務省高官も、安倍演説は「期待外れで失望感がある」としつつ、「今年6月に朴槿恵大統領の訪米を控えており、表立った(対日、対米)批判はしにくい」と語ったそうだ。

 以上が事実であれば、実に興味深いではないか。行間から浮かび上がるのは恐らく中韓の本音だろう。


  ■安倍演説後の日米中韓関係

 最後に、いつもの通り、筆者の独断と偏見をご紹介しよう。以下はあくまで仮説であり、推測でしかないのだが、今回の安倍首相訪米の成果に関する現時点での筆者の見立ては次の通りである。

1、安倍首相は少なくとも米国で「謝罪」や「お詫びの気持ち」に言及するつもりはなかった

 今回の訪米の主題はあくまで日米2国間関係、特に同盟の増進だ。理由は簡単。豪州訪問の際と同様、重要なパートナーである米国との「歴史的和解」を内外に印象づけることで、今後の東アジアにおける日米豪共同の安全保障政策の実施をより円滑なものにすることが求められていたからだろう。

 そもそも、米側は安倍首相から「謝罪」など求めていない。世論調査でも37%の米国人が「既に日本は十分謝罪した」と答えただけでなく、24%が「日本からの謝罪は不要」と考えているそうだ。

 米国人はお人好しなのか、賢いのか、筆者には分からない。彼らは本能的に「広島・長崎」を想起したのかもしれない。

 当然ながら、演説で最も強く「謝罪」を求めていたのは韓国と韓国系米国人だ。しかし、彼らは安倍首相が何を言おうと必ずこれに反対する。その点は中国も同様だろう。そうであれば、少なくとも現時点で安倍首相が「謝罪」に言及する必要などなかったと思われる。

 
2、安倍演説に対する米国の評価次第で中国と韓国は対日宣伝のあり方を変えざるを得なくなる

 これは特に韓国について言えることだ。一方、中国は安倍首相がインドネシアや米国で「謝罪」に言及しないことをある程度読み切っていた可能性がある。中国がそれを承知で日中首脳会談に踏み切った可能性については前回書いた。

 恐らく今回の安倍演説でも中国側の判断は同じだろう。要するに、中国は表面上、メディアなどで従来の対日批判を続けるものの、実際には日中関係の一層の改善を引き続き、段階的ながらも模索していく可能性があるということだ。


3、米国の安倍演説に対する評価は間接的に韓国に対するメッセージである

 安倍訪米関連の米側関係者による一連の発言には共通するテーマがある。それは今回の訪米が「和解のモデル」であり、「和解は不可能ではない」というメッセージだ。

 言うまでもなく、このメッセージの対象は日本ではなく、韓国だ。韓国政府関係者もそのことはひしひしと感じているだろう。だからこそ、彼らは表立った対日、対米批判を控えているのかもしれない。

 米国を巻き込んで日本に圧力をかけるという韓国の従来の戦術は失敗しつつある。

 安倍訪米の成功で韓国は対日外交を修正する必要に迫られるはずなのだが、実はそれを阻んでいるのが政治的に弱体化しつつある朴大統領自身だ。ここに韓国外交最大のジレンマがある。



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米国連邦議会上下両院合同会議における安倍総理大臣演説「希望の同盟へ」 | 外務省



『希望の同盟へ』米国連邦議会上下両院合同会議 安倍総理演説-平成27年4月29日 - YouTube

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